ちょっと不思議なショートショート

10秒から10分の間に読めるSF短編を淡々と上げていくブログです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

かけっこ

「かけっこを始めよう」 げんちゃんは、そう言った。そこは、木陰の涼しげな縁側で、風鈴がチリンチリンとなっている。でも、外は暑くて、その証拠に、コースターの上のガラスのコップは、たらたらと汗を流している。家の門を通して見えるアスファルトは、白…

テレポート反対派

バスに揺られて、窓を見る。 曲線美の世界。 キノコ型のタワーマンション。一本足のテレビ塔。 蜘蛛の巣のように張り巡らされた横断歩道。 カーボンによる第三次技術革命を経た町は、平面の世界から解放され、不規則で混沌と、所狭しと、宙を占拠した。最早…

オーラ

刑事は男にとっての天職だった。 彼には人殺しの素質がある人間を見抜く能力があり、さらに悪を許さぬ正義の心があった。 男は自分の仕事と力に誇りを持ち、殺人犯を次々に牢獄へ連行していった。 時が経ち、老いて刑事を辞めた男は町長から不思議な仕事を頼…

よお、久しぶりだな〇〇。△△だ。本来なら、「拝啓」から始めるのが筋ってもんだが、お前も俺に学がないのは知ってるだろう?大目に見てくれ。 聞いたぜ、お前、今、□□大学にいるんだってなあ。昔から頭良かったけど大したもんだよ。 実はさ、今日お前に手紙を…

天国との通信

男は科学者だった。しかし、世間は誰一人として彼を科学者だとは認めなかった。 男は、分け入った森に住み。母と妻と同居していた。夕方になるとカラスの死骸を森から持ち帰り、金色の立方体の装置から伸びる管をそれにつないだ。そして、ある特殊な電波を死…